14 Dec 2011

粉飾の論理(著:高橋 篤史)

高橋 篤史
東洋経済新報社
発売日:2006-09

昨今話題になっているオリンパスの粉飾事件に触発されて、過去の代表的な粉飾事件の概要を知りたいと思って手に取った本著ですが、連結決算導入前後の日本の大企業の粉飾の典型としてのカネボウ、無形資産中心のIT業界に対する監査の難しさと上場のデメリット側を突きつけたメディア・リンクス、そして資本市場を活用するための粉飾という新しい形を示したライブドア、と三者三様なケースを、丹念な取材を元として詳細に追いかける良書でした。

個人的な感想を付け加えるなれば、著者同様、その脇における監査法人の不作為や癒着、曖昧な立ち位置には疑問を感じることが多かったです。プロフェッショナルとしての監査を成立させるためには、ソフトローや個々人の職業倫理に全てを帰するのではなく、粉飾を見過ごした場合の一定期間の資格停止などの罰則を厳しくするハードローの改正や、監査フィーの出し手が(一部でも)取引所になるなどの思い切ったインセンティブ構造の変化を作らないと、また同じような粉飾とそれを見過ごすインセンティブを与えかねないのかな、と思います。

昨今、日本のスタートアップ業界も再び活気が出てきているように思えますが、これらの事例を他山の石として、またわけの分からない顛末にならないように、起業家のみならずそれをサポートする監査の方々にもある種踏み込んで取り組んでいただきたいと感じました。




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