23 Nov 2011

事業戦略と価値創造の関係/財務危機の基本構造(McKinsey Quarterlyより)

事業戦略と価値創造の関係がMcKinsey Quarterlyに端的にわかりやすくまとまっていたので備忘録的に翻訳しておきます。トップラインの成長(すなわち、市場を創造かある市場のシェアを拡大するということ)、あるいは投下資本に対するリターン率の向上を生じるのが、真によい戦略であり(逆に言えばそれらが戦略の目的変数)、真の意味での競争優位という捉え方はシンプルで参考になります。

引用)
The guiding principle of value creation is that companies create value by using capital they raise from investors to generate future cash flows at rates of return exceeding the cost of capital (the rate investors require as payment).The faster companies can increase their revenues and deploy more capital at attractive rates of return, the more value they create. The combination of growth and return on invested capital (ROIC) relative to its cost is what drives value. Companies can sustain strong growth and high returns on invested capital only if they have a well-defined competitive advantage. This is how competitive advantage, the core concept of business strategy, links to the guiding principle of value creation.
(意訳:会社が、投資家から調達した資本を使って、彼らが要求するところの資本費用を上回る将来キャッシュフローを生み出すことが価値創造の基本原則です。会社がより早く収益を増やし、より魅力的なリターン水準で資本投下できるほど、より多くの価値が創造されるため、成長(率)と資本コストに対する投下資本収益(ROIC)の組み合わせが価値を増やすドライバーとなります。会社が力強い成長と高い投下資本収益を維持できるのは、その会社がはっきりとした競争優位を持つときのみであり、こうやって事業戦略の中核コンセプトである競争優位は価値創造の基本原則と繋がります。)

あとは、財務危機の基本構造についての説明について、足の早い資金で(実は)流動性が低い資産に投資してしまったALM的な失敗としてこれまた参考になります。
引用)
In the past 30 years, the world has seen at least six financial crises that arose largely because companies and banks were financing illiquid assets with short-term debt...Equities are highly liquid because they trade on organized exchanges with many buyers and sellers for a relatively small number of securities. In contrast, there are many more debt securities than equities because there are often multiple debt instruments for each company and even more derivatives, many of which are not standardized. The result is a proliferation of small, illiquid credit markets.
(意訳:過去30年間において世界的に起こった少なくとも6回の財務危機は、主には企業や銀行が流動性の低い資産のファイナンスに短期資金を充てたことによるものでした・・・株式はきちんとした取引所で相対的に少数の証券に対して多くの買い手と売り手の間で取引がなされるため、流動性が高くなります。対照的に、通常はそれぞれの会社ごとに複数の債券があってさらに多くのデリバティブがありまたそれらの多くは標準化されていないため、株式以上に債務証券は数多くあることになり、その結果として小規模で流動性の低い債務市場が拡散することになります。)

Source: Why value value?

11 Nov 2011

国債・非常事態宣言 「3年以内の暴落」へのカウント(著:松田千恵子)

キャピタルマーケットの銀行・格付け機関といった主要プレイヤーの立場からJGB(日本国債)見てきた方によって書かれた、非常に分かりやすい入門書です。ニュース等でちゃんと日本国債関連の議論に付いて行っている人にとっては特に新しいものはないと思いますが、家計金融資産残高を公債残高を超える日は遠くない(この本の試算では2016年)、銀行が保有国債のデュレーションを短期化している、各種経済指標を保守的に見たシナリオ下では公債残高は増え続ける、デフレは財・工業製品を中心とした影響でありサービス価格は依然として高止まりしている、といった点を数字でわかりやすく表示しているのは参考になりました。

ただ、他の方も書いておりますが、タイトルも副題も内容とは乖離していてマーケティング上の都合で付けられたことが推測されるのが残念です。非常事態宣言でも3年以内の暴落についても何も記載はありません。

11/14追記)
結局のところ、JGBをじゃんじゃん発行しても消化できる市場があったがそれが徐々に厳しくなっていることを説明しているだけであって、本格的にタイトになったらどのようなことが起こっていくか、といったシナリオについては殆ど記載がないのが残念です。

しかしながら、何がどの順番で起こるかについてはこれまで専門家のいろいろな主張を見ましたが意見が割れているようですし、これだけグローバルな金融市場が成立した中での先進国の内国債をトリガーとしたデフォルト・デノミは経験がないので(つまりこれだけ金融資産を溜め込んで国債消化余力を持った国は珍しい)、正直なところ起こってみないと分からないというのが現状なのでしょう。

なお、より本格的に学ぶには以下の二冊がオススメです。
国家は破綻する――金融危機の800年
国家は破綻する――金融危機の800年

日本のソブリンリスク―国債デフォルトリスクと投資戦略
日本のソブリンリスク―国債デフォルトリスクと投資戦略

9 Nov 2011

ゾンビ企業を作り出すインセンティブ構造

日本では中小企業の退出が比較的少ないのについて、精神論的な話ではなく、事業的には負けており退出すべきなのになぜキャッシュが回って生き延びている企業を取り巻くステークホルダーのインセンティブ構造の仮設メモを残しておきます。これらをどう検証していくかは別途考えないといけないですね。経営者・株主・金融機関・従業員に加えて政治家(Regulator)を加えておきました。

経営者

  • 金銭的:金融機関に要求されて個人保証をしたり自宅を担保に入れていたりして倒産や事業譲渡などのトリガーがそのまま生活の破綻に繋がるのを避けたい
  • 金銭的:同時にマジョリティ株主であることが多く、資産が紙くずになるのを避けるために実務上の粉飾などを指示することもできる(強いリーダーシップを効かせられることの裏返しなので、必ずしも悪い状態ではないですが)
  • 精神的:「社長」としてのプライドを保ちたい、いい顔をしていたいので他社に買われて自分の居場所がなくなることを避けたい(僕が見てきた限り、大企業にも多い)
  • 制度的:監査役はカイシャとの利害関係者であり、チェック&バランスを効かせるインセンティブはない(OBあるいは顧問弁護士・税理士等でお金をもらっている立場など)

株主

  • プライド:一線を引いていても、創業者であると「自分の会社」という思いが強くて業績があまりに悪くなると介入して生き延びる方策を模索する(これは当たり前の行動かな)
  • 人間関係:経営陣や他の株主との人間関係の維持を重視して損切りをしない(家族や友人などの場合)

市場・制度

  • 株式の買い手を探しても二次市場が未成熟で仲介機関やリスクの取り手が少なく、また評価額が付かない
  • うまく売却価額がついても非上場株の譲渡税が20%と高くて、売るメリットが削減されるので売りたくならない

金融機関

  • 担当者:会計/財務についての専門家が少なく、粉飾的な怪しい数値にそもそも気づかない
  • 担当者:減点主義の評価方法の場合では、数年間の担当の間に問題を起こしてほしくないので少々数字が怪しくてもつなぎの資金を通してしまいたくなる
  • 組織:内部の貸出区分として正常先扱いしており、追加引当をする余裕が業績・自己資本ルール的にない
  • 組織:事実上のDIP状態にあっても、メインとしてガバナンスを効かせるだけの余剰人員やスキルがない

従業員

  • 個人:カイシャを守るために「阿吽の呼吸」で言われずとも数字を作ってしまう(カネボウとかこのケースですね
  • 労働市場:売れるスキルやいざというときの社外ネットワークを持っていない、地方で他の雇用が少ないなどで事実上転職できない場合は、給料カットや粉飾でも命令を聞かざるを得ない
  • 評価制度:実態がなくても経営陣が中身を見ずに作られた数字で評価されてしまう(売上だけで評価される営業、最終的に利益を作ることで評価される経理、など)


政治家(regulator)

  • 選挙においてお世話になっている経緯があると、中小事業者にマイナスになるような政策は通しにくい
  • さらに支援者が中小企業の社長であることが多いため、彼らを保護するための政策(例、リーマン・ショック後の金利支払の減免、手を変え品を変えた公共事業復活)を導入させて「実績」をアピールしたい


7 Nov 2011

The Economist: Should Greece leave the euro zone and return to the drachma?

Question: Should Greece leave the euro zone and return to the drachma?

My Answer: Yes. (as of Nov 11 0:30 am, 49% YES v.s. 51% NO)

Whether Greece leave the euro zone or not, it's likely that Greece would end up defaulting its debt due to the poor management of its government. And if Greece is kept in the euro zone, this kind of turmoil could happen again due to the same currency over totally different economic areas.

Instead, leaving the euro zone would give Greece the devalued drachma after all, which could make its tourism industry, which I assume as one of the few competitive industries there, attractive to foreign visitors; at least its default could never affect the euro more than this time. Thus I believe Greece should leave it.

Another way to see it from FT, but I think his scenario seems less likely and backed up by no actual figures.
Greek default within the euro is the only real option

4 Nov 2011

同和と銀行 三菱東京UFJ“汚れ役”の黒い回顧録(著:森 功)

帯にあるように「同和団体のドン」小西邦彦と「汚れ役」に徹した幹部行員(三和銀行)の関係から眺めるバブルの一面です。

銀行からノンバンクを経由した不動産投資、それを利用してのし上がる、同時に銀行に利用されたケースは大小たくさんあるのでしょうが、このケースは極めて典型的でもありそこに切り込んだこの本はジャーナリズムとして非常に優れたものだと思います。

全然違う側面から同和団体を取り上げた「放送禁止歌」と合わせて読んで感じたのは、差別自体を直接に声高に悪用した人がいた初期から時間が経つと、むしろそのことにより何となくアンタッチャブルになるこの国の「空気」を周りがうまく利用し始める(思考放棄なり落とし所なりのロジックとしてXXXが言うのだから・・・というような)という構造が、「ワシはそんなに悪やろうか。警察の調書を見ると、銀行の連中はみなワシに脅されて、仕方のう取引をした、言うとるんや」という弱音に端的に現れている気がしてなりません。




22 Oct 2011

生保再建(著:千代田生命更生管財人団)

千代田生命更生管財人団
東洋経済新報社
発売日:2002-04

2000年に経営破綻した千代田生命の管財人となった弁護士のチームがその話を換骨奪胎して共有可能な小説に仕立て上げた本ですが、小説というよりは法律家管財人から見たケース・スタディとして勉強になりました。

詳細な技術論・法律論の記載はありませんが、AIG(作中ではGIC)との交渉を中心とした、管財人チームのチームアップとセルサイドDDプロセスを回すにおける各種プロファーム(リーガル、FA等)の使い方と勘所は参考になります。一方、事業面については(事業)管財人としてAIGから派遣されてきたチームに任せきりだったようでそちらの施策や進め方については殆ど記述がなく、ターンアラウンド・ケースとしては片手落ちなのが残念なところなので、星を一つ落とさせて頂きます。




18 Oct 2011

チッソ支援の政策学―政府金融支援措置の軌跡(著:永松 俊雄)

公害という外部不経済の問題に対して、チッソという具体的な事例でどのように国・県・当事者企業・被害者というアクターが関わりあって政策を形成していったか(国と県との間のやり取りが本書のメインではありますが)を理解するのに非常に役に立つ良書です。

水俣病という問題が発生後しばらくして原因企業として特定されたチッソが経営不振になり、各種議論の上県債というルートで公的資金を注入し、その後患者支援が安定化して患者補償金よりも積み上がった公的債務償還金が上回るようになり、金融支援(低利借換え、利払い繰延等)を実施するに至る、といった流れを具体的な数値と制度・スキームの解説と共に概観することができます。

筆者の永松先生は一般化、理論化に対しての心残りを結語にも書かれていますが、一般化・抽象化してかえってわかりにくくするよりも、非常に優れた類まれなるケース・スタディとして、次世代の政策策定・決定者の研修等に使われて然るべきクオリティだと思います。余談ですが、法律や政策系の大学・大学院で、アクターごとにチームを作って議論をさせると面白いのではないでしょうか。

そのうち、今回の東日本大震災に伴う東電への支援措置との比較をまとめておこうと思います。



11 Oct 2011

Think Different

このキャンペーンについてエントリするのは多分3回目ですが、スティーブ・ジョブズがナレーションをしたバージョンを知りました。読み方として、最後の"do"を強調しているのがとても印象的です。



実際に放映されたバージョンはこちらのようです。


"Here's to the crazy ones. The misfits. The rebels. The troublemakers. The round pegs in the square holes. The ones who see things differently. They're not fond of rules, and they have no respect for the status quo. You can quote them, disagree with them, glorify and vilify them. About the only thing you can't do is ignore them because they change things. They push the human race forward. And while some may see them as crazy, we see genius. Because the people who are crazy enough to think they can change the world, are the ones who do."

17 Sept 2011

高齢化率と国民負担率:高村薫「新リア王」に触発されて

高齢化白書の最新版がニュースになっていて、高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)が2010年に23.1%になったようです。

以前とある勉強会資料として、横軸に上記の高齢化率を、縦軸に国民所得に対する負担率(税金・社会保障を含み財政赤字を含まず)を取って、比較対象の主要先進国の1980年~2007年のデータを散布図上にプロットしたところ、日本が急速な高齢化の中で国民負担率を上げられていないことが明確になりました。ちなみに、ドイツも似たような人口の動きをしていますが、負担率は50%前後と日本より10パーセンテージポイント以上高くなっています。
高齢化率(横軸)と国民負担率(縦軸)

高齢化の進展によってどうしても負担が増えるのはやむを得ないと思うので、財政的な破綻を避けるためには、人口構成を維持する(出生率を回復させたフランス・スウェーデンや、移民を受け入れるアメリカ・イギリスなど)あるいは、高齢化の進行に応じて負担率を高めていく(ただし、民度が低い場合のデモクラシー的には困難なプロセス)のシンプルな二択しかないと思っていますが、後期高齢者医療制度の顛末を見ても分かるように、この問題は容易に政治化(「お年寄りに負担を押し付けるのか」という感情的・扇情的な言説)されやすいのが現状です。

これを挙げて民主主義の限界と言う人もいるかもしれませんが、民主主義制度下において年金や社会保障を世代間負担の立て付けにしていることが問題、というか個人的には大きな誤りであって、決してデモクラシーそれ自体の問題だとは僕は思いません。が、デモクラシーの枠組みでの解決が困難になっているのは現実であるので、破綻という形のハードランディング以外の現実の着地の仕方を模索するのが、政治の役割でしょう。

高村薫「新リア王」を読みきった影響で、今日はすこし政治的な人間になっているようです。
新リア王 上新リア王 下
これらは「晴子情歌」「太陽を曳く馬」をつなぐ大事なピースであり、あくまで「父と子」の物語でした。昭和という時代を生きた「母と子」「父と子」そして平成に入った「子とその子」という連綿と繋がる物語であることをようやく理解し、改めて上記二作品も読み直さなければ、と感じました。

15 Sept 2011

htc evo WiMAX通信速度 主要都市別

htc evoのWiMAXは、「平均して下りで5,000-6,000kbps、上りで1,500-2,000kbps」で、3G回線の倍前後のスピードが出ていたようです。首都圏・地方主要都市での3G回線スピードは、上り/下りともにほとんどのスポットで auが首位というのは驚きました。

スマートフォン3G回線の通信速度、全国主要都市のほとんどで au が首位
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