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25 Nov 2005
虚妄の成果主義(著:高橋伸夫)
虚妄の成果主義―日本型年功制復活のススメを古本屋で購入。
とりあえず納得。「学者に(こそ)信念が不可欠」との姿勢は非常に大好き。
"Satisfaction by reward?"
まず、「報酬」は不満足要因(環境・衛生要因)であり、改良されたからといって即「満足」にはつながりにくい。よしんばつながっても、「満足」と「成果」には、必ずしも正の相関関係がなく、「成果」を志向させるのは本人の資質であったり、他の経営上の仕掛けなんだろう。逆に、「報酬」制度に上限があると(普通は青天井ではないはず)が「成果」の上限を規定してしまう可能性は十分にある。
"Satisfaction by work"
つまり、「成果」の先に金銭的「報酬」をぶらさげてしまうことで、「仕事」自体が持っているはずの内発的動機付けが弱まり、「報酬」の外発的動機付けに左右される。そんなことをしなくても、「仕事」自体が面白ければ、人はちゃんと動機付けられ「満足」する。
"For satisfaction"
つまり、「満足」することと「どれだけ頑張るか」は別の問題である。じゃあ「満足」はそもそも必要なのかという議論になるかもしれないが、辞職すなわち「退出行動」については「満足」が影響を与え得るので、組織を維持・拡大するためには「満足」は気に掛ける必要がある。でも、それは「報酬」よりも「自己決定感」を醸成したり「見通し」を持たせたりすることで向上させることができる。
"Against pay-per-performance"
そうしたら、じゃあなんのためにいわゆる成果主義(成果測定・成果連動報酬)を導入する必要があるというのだろうか。成果測定によって人事評価を客観化して逃げるよりも、腹をくくって人事評価できるミドルを育成すべきなんじゃないのか。そして社員を動機付けるには、成果連動報酬
なんかよりも経営者は「未来」を語り、「見通し」を与えなさい。
"
My Comments"
まとめるとこんな感じかなぁ。ちょっと自分の主観も混じったが。世の中の効用関数の分布は一様ではない気がするので、なんでも「報酬」に一元化するのは経営・上司の手抜きじゃね?という指摘には同意。
ただ、「報酬」の評価的側面(報酬それ自体にではなく、報酬の絶対・相対的な差による自己有能感から来る動機付け、すなわちモノサシとしての報酬)の効果については考察が不足している。ただ、これは差をクリアーに付けることができる組織文化・ビジネスにのみ限定される議論だろうし、世の中の参考になるかというと現時点では余りならない気がするのがよいか。一部外資系とかには意味がありそうだけどね。
あと、じゃあ「どうやって社員を成果志向にするのか」という問いに対して、若干オプティミスティックな気がする。サンプル調査が優良大企業中心とかなのかな。まあ、そこは学者の分野というよりは、経営者の分野だろうが。
とりあえず、この本が50年後くらいに「古き良き日本のサラリーマンの意識」を説明する文献とかになってないことを願いつつ。僕も、本書に書かれているような人達のbehaviorは好きなので。
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