28 Mar 2012

日本のソブリンリスク―国債デフォルトリスクと投資戦略(著:土屋 剛俊)

日本国のソブリン(政府の信用、とでも言うべきか)のデフォルトにいたり得る経路を財政(政府)、景気(民間経済)、市場、日銀ごとのファクターをその順番で想定して各シナリオの確率を検討している第四章は他のいわゆる他の破綻本よりも精緻で非常に頭の体操の参考になりますし、三章までの各種数値を駆使した冷静な現状分析も頭の整理に役立ちます。

一転して、五章と六章は債券運用担当者向けの内容になりますが、結論としては国内運用サイドにおいてはできることはデフォルトがいつ来ても1歩先んじて機敏に対応できるようにしておくしかない、という結論は、国内金融機関が構造的に動けなくなっていることが浮き彫りになります。なお、五章のクレジット投資の基礎はだいぶ色んな詳細を端折っているのでこれは別の本で学んだ方がよさそうです。

大震災以前に書かれた内容がメインであり、大震災後については五章と終章に付記があるのみですが、基本的なメカニズムが震災を経て極端に変わったわけではないので十分に現在でも読む価値のある本でした。


この本の四章のシナリオを元に、それぞれに個人的に対策を打っておくのが吉だと思います。個人的な考えでは、現状の消費税増税(再来年!の2014年4月に8%、翌年10月に10%に上げる程度なのに)ですらこれだけの政局となるようでは、財政均衡に持っていくことが可能な点をあっという間に過ぎて、あとはどのようにカットするか(デフォルトを起こして保有残高の多いゆうちょ銀行・地銀を潰していくか、日銀引受を増やしてインフレ・円安を招いて国民に負担を押し付けて帳消しにするか)という問題処理しか残らない、というのがmost likelyなシナリオだと思っています。

今度、去年勉強会で作った簡易シミュレーションだと、色んな前提を非常にアグレッシブ*に置いてみてやっと均衡するくらいでした(下図の赤線部分)
ブログ作成者による日本政府借金額の試算(2011年時点)

*アグレッシブな前提

  • 人口推計は死亡低位・出生高位で人口減が緩やか
  • 人口当たり生産性は毎年1%ずつ改善
  • 基礎支出は当初から毎年10%ずつ削減して早期に50兆円まで抑制
  • 消費税率は2014年に8%(予想通り!)、次の選挙の2018年に15%
  • シミュレーション期間中に金利上昇なし

これをもう一回ブラッシュアップして、X-Dayの自分なりの目安を付けておこうと思います。



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