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11 Sept 2007
男子の本懐(著:城山三郎)
日本の行く末を憂え、理想のための覚悟を伴った二人の国士の物語です。書名は打たれた直後に浜口御幸がこぼしたとされる言葉(史実かどうかは不明)ですが、この時代、今の時代から想定できないほどテロによる政治家の死亡が多かったとはいえ、殺されることを覚悟してでも成し遂げたい政策を持ち、死の瞬間までそれを追求できたことがある種の「本懐」といえるのではないでしょうか。
凶弾に倒れた浜口が回復まで至らず亡くなった際に盟友であった井上準之助が駆けつけ、それまで強面の切れ者として描かれていた井上が泣き出すシーンは、淡々と書かれているが故にもの哀しいものがあります。
政治は現実の国民を相手にする以上、どうしてもその時代の趨勢と世界・国内情勢に大きく翻弄され、志があっても全く果たせなかったり、あるいは手段自体が後世からみると全くの誤りであったり、あるいは志と全く逆のことでもそれをその時の国政に携わる者として呑み込まないといけなかったりと、政治家の人生はとかく理不尽なことばかりなのだと想像できます。前首相のように、何はともあれ一念を通しきることができた政治家は、極めて希でしょう。能力と幸運、どちらが欠けても優れた政治家-物事を実現するという意味での-とはなり得ないのでしょう。
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