11 Nov 2011

国債・非常事態宣言 「3年以内の暴落」へのカウント(著:松田千恵子)

キャピタルマーケットの銀行・格付け機関といった主要プレイヤーの立場からJGB(日本国債)見てきた方によって書かれた、非常に分かりやすい入門書です。ニュース等でちゃんと日本国債関連の議論に付いて行っている人にとっては特に新しいものはないと思いますが、家計金融資産残高を公債残高を超える日は遠くない(この本の試算では2016年)、銀行が保有国債のデュレーションを短期化している、各種経済指標を保守的に見たシナリオ下では公債残高は増え続ける、デフレは財・工業製品を中心とした影響でありサービス価格は依然として高止まりしている、といった点を数字でわかりやすく表示しているのは参考になりました。

ただ、他の方も書いておりますが、タイトルも副題も内容とは乖離していてマーケティング上の都合で付けられたことが推測されるのが残念です。非常事態宣言でも3年以内の暴落についても何も記載はありません。

11/14追記)
結局のところ、JGBをじゃんじゃん発行しても消化できる市場があったがそれが徐々に厳しくなっていることを説明しているだけであって、本格的にタイトになったらどのようなことが起こっていくか、といったシナリオについては殆ど記載がないのが残念です。

しかしながら、何がどの順番で起こるかについてはこれまで専門家のいろいろな主張を見ましたが意見が割れているようですし、これだけグローバルな金融市場が成立した中での先進国の内国債をトリガーとしたデフォルト・デノミは経験がないので(つまりこれだけ金融資産を溜め込んで国債消化余力を持った国は珍しい)、正直なところ起こってみないと分からないというのが現状なのでしょう。

なお、より本格的に学ぶには以下の二冊がオススメです。
国家は破綻する――金融危機の800年
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日本のソブリンリスク―国債デフォルトリスクと投資戦略
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