18 Oct 2011

チッソ支援の政策学―政府金融支援措置の軌跡(著:永松 俊雄)

公害という外部不経済の問題に対して、チッソという具体的な事例でどのように国・県・当事者企業・被害者というアクターが関わりあって政策を形成していったか(国と県との間のやり取りが本書のメインではありますが)を理解するのに非常に役に立つ良書です。

水俣病という問題が発生後しばらくして原因企業として特定されたチッソが経営不振になり、各種議論の上県債というルートで公的資金を注入し、その後患者支援が安定化して患者補償金よりも積み上がった公的債務償還金が上回るようになり、金融支援(低利借換え、利払い繰延等)を実施するに至る、といった流れを具体的な数値と制度・スキームの解説と共に概観することができます。

筆者の永松先生は一般化、理論化に対しての心残りを結語にも書かれていますが、一般化・抽象化してかえってわかりにくくするよりも、非常に優れた類まれなるケース・スタディとして、次世代の政策策定・決定者の研修等に使われて然るべきクオリティだと思います。余談ですが、法律や政策系の大学・大学院で、アクターごとにチームを作って議論をさせると面白いのではないでしょうか。

そのうち、今回の東日本大震災に伴う東電への支援措置との比較をまとめておこうと思います。



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