16 Jan 2013

IGPI流二冊:経営分析/セルフマネジメントのリアル・ノウハウ

どちらもさらっと読めますが、書いてあることを実際に実践して実とするには最低数年以上の試行錯誤が必要かと思います。先に試行錯誤をしてきた身としては、いわゆる「戦略」や「キャリア」とかについての自分の問題意識が整理されて役に立ちました。惜しむらくは、学生のときに読んでいたら星五つだったかなと思います。



IGPI流経営分析のリアル・ノウハウ
基本的なヒアリング等から仮説的ななPL、BS、CSを連動する形で作り検証するとともに構造的な無駄を洗い出すというアプローチは当たり前に聞こえますが、実務的に事業の全体を見る立場からだとそのダイナミックなお金の流れを把握しないといけないということは、若手ビジネスマンや投資家にとっては参考になります。

ただし、いわゆる経営分析フレームワークは古典的な、歴史の検証を経たもの(3C,SWAT,PEST,5 Forces)に留めており説明やサブ概念の定義も他ビジネス書籍よりもさらっとした扱いになっているので、その点は別書籍を参照した方がよさそうです。

また、全体的な構成として、定義がはっきりしている規模・範囲・密度・ユーザなどの各種経済性と定義が曖昧な○○ビジネス/事業という言葉が代わる代わる出てくるため、分かる人には分かるだろうけどそうでない方には議論のストラクチャーが見えないかと思いますので、その点では不親切かと感じました。実際に手を動かしてやってみたことがある人でないとリアリティを持って読めないかと思います。


IGPI流セルフマネジメントのリアル・ノウハウ
タイトルだけを見たら巷にあふれる自己啓発本かと見間違いましたが、中身を読んだところ、最初の二章はM&Aに関する基本的な話のいわば前段であり、三章・四章が国内×海外企業のハイブリッド状態においてパフォーマンスを出せる人材要件と、そうなるためのアクションについてまとめられています。

三章に書かれている、どんなに会社と運命を同一化しようと片想いしても、「会社というのは、最後の最後で裏切る」というマインドセットはこれから不確実な世界を生きると人たちしては基本だと、筆者と同様にレビュワーも思いますが、世の中やマスメディアではあえて明示的に語られていないことではないかと思います。

四章では、それ故どんな状況になっても食っていけるだけのビジネスパースンになるために「セルフマネジメント」すなわち自分のリソースをマネージして成果を出すことが必須であり、具体的には、自らのビジネスを数字で把握し議論できるようになる、使う可能性の高い業務上の英語から学ぶ、他組織への出向や他部門へのローテーションで二本(以上)の軸を持つ、小さくても構わないのでバイサイドでM&Aや親会社と子会社のはざまで清濁併せのむ経験をするチャンスを探す、といった具体的・現実的なノウハウが書かれています。

なお、上では前段と書きましたが当初の二章も実は面白い内容が含まれており、「イノベーションに依存しなければいけない分野を捨て」た海外企業の事例や、M&Aによる「ムラごと売買」「経営陣を入れ替える」効果などは現実的な経営戦略論として色々なヒントになりました。

まとめると、ただ必要なスキルを羅列するだけでなく、なぜそのようなスキルがどのような環境で求められるか、といったコンテクストまで整理された良書でした。35歳くらいまでに前述のような具体的スキルは学んでおきたいと改めて思いました。


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