23 Sep 2012

株主主権を超えて(著:広田 真一)

企業の存在意義を多様なステークホルダーとの有形向けの価値取引を中心におくステークホルダー型モデルを、日本企業に関して当てはめて包括的な実証研究を提供した観点でこの著書はきわめて優れているものです。さらに、著者は人々の幸福感から議論を始めており、そのスタンスは形而上学的な議論に終始する学者とは一線を画するもので、非常に好感が持てます。

ただ惜しむらくは、著者が疑問を投げかけている古典経済学的な残余財産権を保有する株主主権型モデルが、若干時代遅れな議論になっている感がある点でしょうか。世界的な議論においては「会社は株主のもの」という単純かつナイーブな議論は蚊帳の外であり、有体に言ってしまえば、どのようにマクロな資本市場の不安定さを回避しながら一方でミクロな個別企業の企業価値を高めるようなガバナンスを成立させる経済制度を築き直すか、という両論を補う制度設計に議論の中心は移っていると思います。

さらに、そのような議論を日本人特有のムラ社会・集団主義的志向に当てはめたうえで日本人が幸せに生きていく現実制度論を展開できるか、が現代の日本の経済学者に求められている役割だと思います。





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