22 Apr 2009

戦略不全の因果(著・三品和広)

千社を超える日本企業の財務データから戦略の真髄を事業立地の決定・転地(すなわちWhere to competeの見極め)と看破した名著です。「組織の重さ」ぶりの、きわめて実証的な経営書でした。次は、「事業立地」という切りわけについて精緻化を図って頂ければと思います。

自分なりに要点をまとめておきます:事業立地を選ぶ/移すこと(Where to compete)が戦略の要諦でありますが、このスタディで指標としてトラッキングしたインフレーター調整後の実質利益を40年を超えて更新し続けることは極めて難業なのは、経営者の任期・寿命の限界と事業立地の沈下(ライフサイクル)という要素が重なりあうからです。さらに、不毛な立地を選ぶと、後に転地をするのは顧客/技術/チャネルへのオーバーコミットが生じるのと旧来のビジネスシステム/組織(How to compete)の慣性との闘いにエネルギーを要するため困難になります。その中でも、転地を成し遂げるためには、自立的な経営基盤を前提として、10年以上の長い任期の社長/会長による継続的コミットメント、経営者のマンデート/使命感、経営者の経営能力(知性/感性/野性)といった条件をみたすことが必要です。

さらに現代の競争を、アメリカの創業経営者 v.s. 日本の専門経営者(80年代の競争はこの逆)と見ているのは産業史観としてでなく、経営者育成という観点からも面白く、日本において創業経営者層が増える環境とはどのようなものか、日本の専門経営者層のレベルを上げるために如何に経営体験を積ませるか、経営者が管理者の下では育たない中で一度断ち切れた循環を再生することはできるか、といった経営を志向するものとして考えざるを得ない疑問を投げかけてくれます。


何点か読後に改めて気になった論点;

・インフレーター調整後の実質利益を40年を超えて更新し続けることは極めて難業
 1.経営者の任期・寿命の限界
 2.事業立地の沈下(ライフサイクル)

・事業立地を選ぶ/移すこと(Where to compete)が戦略の要諦であり、不毛な
 立地を選ぶと、後に転地をするのは困難
 1.顧客/技術/チャネルへのオーバーコミット
 2.旧来のビジネスシステム/組織(How to compete)の慣性との闘い

・転地を成し遂げるためには、自立的な経営基盤を前提として
 1.10年以上の長い任期の社長/会長による継続的コミットメント
 2.経営者のマンデート/使命感
 3.経営者の経営能力(知性/感性/野性)

・アメリカの創業経営者 v.s. 日本の専門経営者(80年代の競争はこの逆)
 1.日本において創業経営者層が増える環境とはどのようなものか
 2.日本の専門経営者層のレベルを上げるために如何に経営体験を積ませるか

・経営者は、管理者の下では育たない

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